Column of k3grafix

地方の脳みそで考えるデザイン雑感 Vol.1

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2012-01-24_1327411178.jpg「挑戦」というデザイン
通常、企業の商品開発では、まず「何を作るのか」というブリーフィングからはじまり、設計・製造・物流・販売という、ごく当たり前で自然な一連の流れがあります。しかし、分ってはいてもなかなかそれらの仕事が思ったように上手くつながっていくことはありません。モノづくり産業の方々からは自社商品に関して「良いモノなのに売れない」「品質には自信があるんですが・・・」といった声もよく耳にします。良いモノが販売に結びついていかない・・・。一体何が足りないのでしょうか?それは「ビジネスのプランニング」です。つまり、「作ったモノ」を中心に企業が良い経営を展開するためのシナリオです。それはちょうど演劇における役者と台本のように密接な関係があります。どちらが欠けても観客を喜ばせる演劇は成り立ちません。開発活動とビジネスプランの関係はまさにそれであり、それぞれが独立した存在ではありません。企業経営上においては、モノの開発計画とそれを活用した事業計画を同時並行的にコントロールしなければなりません。ここまでは「当たり前の話だ」とお思いになる方も大勢いらっしゃるかと思います。では、その「コントロールする方法・基準・ルール」といった「ソフトウェア」を自社でお持ちになっていらっしゃる方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?この「ソフトウェア」こそが、今まさに企業に求められているポイントになります。

地方の脳みそで考えるデザイン雑感 Vol.2

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2012-01-28_1327760576.jpg「挑戦」というデザイン2
つまり、「我が社の商品によってどこのどんなお客様のどんな生活をどういう風に豊かにしてあげられるのか?」というモノの存在意義や価値をキチンと設計し、事業活動にまで展開していくことのできる「ソフトウェア」です。さぁ、ここまで来るといかがでしょうか?多分、疑問符がつく方が多いのではないでしょうか?ここでデザイナーを活用する必要性とメリットが生まれてきます。これからは今までのような製品中心主義が通用しなくなってきます。今後は、エンジニアリングのスキルだけを使って「何を作るか?」と発想するのではなく、そこにデザインを活用し「どんな生活価値をもったモノを提供していくか?」と発想しなければなりません。つまり、製品には生活価値の設計まで組み込むことが必要であり、その上で良い企業経営を行なっていくためには、もう一度、自社の「ビジネス」を設計し直すことが必要です。それはまさに企業が行う「挑戦」という名のデザイン活動ではないでしょうか。

地方の脳みそで考えるデザイン雑感/グッドデザインに国境は無い

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2012-02-01_1328104043.jpg山梨のグッドデザインに思う
「伝統形態を創出する」地域デザインvs「伝統を裏切る」地域デザイン。やまなしグッドデザイン選定事業に出品された作品の多くにあてはまる言葉でしょう。「多機能帯留(ループ)」は伝統技術を守りながら「形」を裏切り、さらに蒔絵技法とのコラボレーションにより新しいアンサンブルが生まれ伝統デザインを見事に裏切った秀作であると言えます。また、山梨の伝統技術として日本に、いや、世界に誇る「印傅」は今回、日産自動車による未来のコンセプト・カー「ジクウ」の開発におけるコラボレーションによって、もはや「地域産業」という枠組みを超越してしまったはずです。まさに「グッドデザインに国境はない」の証明ではないでしょうか。シャトージュンの「vin de rope」も「ワイン」という、歴史と伝統に裏打ちされ我々の生活に深く根づいている商品を新しい観念の中でつかみ取ろうとしはじめており、また、NPO法人スペースふうの「petal cap」による環境配慮型の一連の事業展開には地域と一体となったNPOによる新たなエコ産業の可能性を見い出すことができます。このように「観念の変形」に端を発し、「企てた仕事」にまでその次元を高めることによって生まれた「Made in 山梨」のデザイン達が、まさに今年度の「やまなしグッドデザイン選定商品」だと言えると思います。旧来の観念から自ずと生じてくる「こうあるべき」というカタチを捨て去り、その観念を変形させることでこれまでにない価値と仕事を作り出していく。今、この閉息した時代の中にあって来るべき新時代を担う新しい産業、すなわち「デザイン産業」がその姿を表しはじめているように感じます。